Column

2021/06/17
本田 仁平
「common」レポート

床に置いてあったり、壁に浮かせて取り付けられたり、台に不思議なバランスで置いてあるものたち。カラフルで軽快だけど、どことなく正体不明な未知の物体のようにも感じます。

展示でもメインになっているDMの写真にもある立体作品は、園芸用の支柱にラップを巻いてウレタンフォームを吹き込み固まったところでラップを外して作られています。メタリックな着彩により重量感がありますが、実際ウレタンフォームは軽いのでこの絶妙なバランスで支えられているのです。

ウレタンフォームの膨張の仕方によってラップのシワのつき方がそれぞれ違った表情を見せています。

それらは山や海、断層など自然の作り出した造形を思わせます。人工物を吹き付けてできた形が、山とか海のような自然のもの連想させるという不思議な体験です。

浮き具がトレーニング用のゴムバンドで引っ張られ、それをおもちゃのパチンコで支えあっている作品。浮き具は意外と重たいのですが、まるで風船のように浮かんで見えます。

でもよく見るとゴムバンドが結構緊張感を持って引っ張られている感じ。

視覚から得られる「こうだ」と思っていた自分の感覚を軽やかに解体して、新しく更新してくれる面白さがあります。

このUFOを思わせる作品は軽く立ち上がっているように見えますが、スイカを置く用のザルのような台の隙間にモルタルを流し込んで、それを小さなブラシ3本で支えています。ブラシのしなり方を見ると、思ったより重みがありそうだなというのがわかります。

「オーパーツ」のシリーズは、本田さんが拾ったりもらったりしたものを組み合わせて作られた小さな立体作品です。「オーパーツ」とは「時代錯誤遺物」「場違いな加工品」と訳されることが多いそうで、ようは正体不明な物体のこと。正体不明・用途不明だけど過去にあったはずの文明の出土品のような、遠い星で使われていた何かだろうか、というようなSFチックな想像をしてしまうポップな作品です。

彫刻作品というと、設計図があり完成に向かって作品を作っていくイメージがありますが、本田さんの作品は自分のコントロールが効かないところで出来上がる造形の楽しさがあります。

完成形を決めないことで出来上がっていく形の面白さ。そこから広がっていく想像の余地。

「common」というタイトルの通り、本田さんが作品に使っている素材はホームセンターで売っているような私たちの身の回りにある、ありふれたものたち。

よく行くお店の店員さんとか、高校生の時に私服であう友達とか、会う場所が変わると誰だかわからなくなるようなことってよくあると思うんですが、「あれ、あなただったんだね」というような発見が本田さんの作品にはあります。

発見の面白さと、それをさらに正体不明にしたような組み合わせの造形、バランスの緊張感、完成形をあえて決めずに作られて行く楽しさ。それらが空間でうまくブレンドされて、発見と混乱を行き来きしながら本田さんの感覚を追体験できる展示です。会期は6/27(日)まで。

本田 仁平「common」
2021年6月12日[土]- 27日[日]/ 月曜・火曜定休
※作家在廊日:12・16・19・20・23・25・27日

16日と23日は15:00-19:00、20日は13:00-17:00、25日は12:00-17:00、その他は終日在廊される予定です

スタッフ:ナカノ

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