Column

2023/06/21
Asyl
「cook together」レポート

Asylはグループ名であると同時に「より良い場所」を探すための活動の総称です。
 
「より良い場所」とはなんでしょう。安心できる場所、リラックスできる場所。あるいは自由でいられる場所、自分らしくいられる場所。場所といえど、それは常にあるものではなく、その場所を形成する人たちとの関係性や目的など複合的な要素でバランスが保たれている流動的なもの。今の自分にとっては良い場所でも、年齢を重ねたり考え方が変わったりすれば、また別のより良い場所を探すために踏み出していく。

Asylが会場で配布しているハンドアウト(事前資料)には “「cook together」では、社会が共有する、料理、儀礼、社交といった、行動様式、生活様式および文化について考察し、その規則や方法を再構築することで、「より良い場所」を作り出すためのプロセスを提示します。” とあります。この一文を読んで私は『もてなしとごちそう』という本を思い出しました。

中村安希『もてなしとごちそう』はノンフィクション作家の中村さんが、世界各地の見知らぬ土地で見知らぬ人からご飯に招いてもらい、その土地と文化に根ざした料理を味わい交流をしてきた、さまざまなもてなしと旅の記録です。本書でもてなされた場所は中国、ラダック、バングラデシュ、香港、ミャンマー、難民キャンプ、シリア、リトアニア、ドイツ、スロヴェニア、チュニジア、エジプト、エチオピア、ウガンダ、タンザニア、ジンバブエ、ジャマイカと多種多様。もてなしてくれる人々は旅先で偶然出会う知らない人たちばかり。決して裕福だったり余裕のある人たちばかりではないのに、もてなしはその人たちの最善を尽くして行われ、中村さんもどんな料理が出てきても全力で受け入れる。
 
「食べる」という行為はとても無防備で危険を伴い、だからこそ食事に招いて共有するという行為はお互いが同じコミュニティの人間であるということを明確にさせる。「もてなし」はする側もされる側も協力し合ってはじめて成り立つコミュニケーションで、国や文化や規模や時代が変わっても、その場をより良い場所に、より良い関係を築くために脈々と行われてきたささやかな儀式なのだということがわかります。

Asyl「cook together」で作られた空間は、メインビジュアルになっているブタの部屋という設定です。ブタは気の置けない友人であるイヌとウシとクマを自分の部屋に招いて、渾身の料理を振る舞う準備をしています。恋心を寄せているイヌを自分の目の前の席にセッティングしていたり、ちょっと様子のおかしいメニューだったりしますが、ブタなりに楽しい時間を過ごすための最大限のもてなしをするつもりでしょう。友人たちがもてなしを全力で受けてくれることを祈ります。

Asylは3人組のグループで、搬入の時からあーでもないこーでもないとこの空間を作り上げ、週末に3人で在廊してワイワイしている様子を見ると、Asylの活動こそが3人にとっての「より良い場所」なのかなと感じます。
 
Asyl「cook together」はいよいよ今週末6月25日(日)まで。バラエティ豊かなAsylオリジナルアイテムたちは一部商品をウェブショップでも販売しています。とはいえ本当に一部のみなので、お時間のある方はぜひ会場に足をお運びください。

Asyl
「cook together」

 
究極のメニュー/ホームパーティー/気の置けないともだち
 
 
期間
2023年6月10日[土]- 6月25日[日]/ 月曜・火曜定休

 

 

 

スタッフ・イイヅカ

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