Column

2021/05/28
近藤 南
「Bright and dark」レポート

近藤さんとお知り合いでない方で、「近藤南」って聞いたことあるような、という方は、昨年の7月に当店で開催していただいた企画展、近藤南「dromen」で知ったのかもしれません。

いつもであれば再度個展を開催してもらうのは早くて2年後なのですが、今回はいつもより早い1年での開催となりました。と言っても、前回は近藤さんのアクセサリー・プロダクトブランド「DROOM」の一輪挿しをメインとした展示となっており、対して今回は彫刻作品のみの個展です。

前回「dromen」の様子はこちらからご覧頂けます。小さな一輪挿しが壁にたくさん並んでいる様がとてもかわいらしく美しいのに対し、向かい側の壁には近藤さんが見た悪夢や不可思議な体験を具現化させた彫刻作品が並び、ふたつの異なる空間が存在しているようなスペースとなっていました。

今回ギャラリースペースに並ぶのはすべて彫刻作品です。空間そのものがひとつの作品のように調和しています。

近藤さんの彫刻作品は、硬いはずなのにとても柔らかそう。柔らかそうを通り越して、今まさにどろりととろけてボタリと落ちそうな「dromen」シリーズは、悪夢の抽象化を試みるという作品です。半陶土に乳白という釉薬をかけた艶のある質感は、一見すると美しく、しかし悪夢が元になっていると聞くと途端にどこか不気味に見えてきます。このどろどろか落ちきったとき、その下からどんなものが現れるのかと考えると心穏やかにいられません。

『口中崩壊』は歯が全て抜け落ちるという、これぞ悪夢という感じの悪夢。この悪夢についてお話すると、私も同じ夢を見たことがあるという方がけっこういらっしゃいます。夢占いなど見てみるとストレスや疲労の溜まっている状態であることが多いようです。最近この夢を見るという方はぜひ休んでください。

『うさぎのような怪物』は、部屋いっぱいの大きさのうさぎのような生き物に遭遇するという夢。耳の垂れたうさぎだったそうで、一瞬かわいい気がしますが一口で頭を持ってかれるようなサイズのうさぎだと思うと悪夢でしかありません。この作品は頭の部分がどろっとしていて、雲母のキラキラもかわいいんだか不気味なんだかという複雑な気持ちにさせられます。

『2羽のおさげの鳩』は、尾っぽがおさげになっている仲睦まじい2羽の鳩を見るという不思議な夢。こんなに可愛らしい作品なのに、どんな悪夢を内包しているのだろうと不安な気持ちで近藤さんにお話を伺いましたが、不思議に可愛らしい夢だったので安心しました。

そして今回もっともおもしろいというか、ご購入いただくことでおもしろくなるのが『食べても食べても無くならない』という作品です。夢の内容は、「一見美味しそうに見えるお菓子のメレンゲだが、全く美味しくない。もう食べたく無いにも関わらず食べても食べても無くならない」という、シンプル且つイヤすぎる悪夢です。味まで感じられたそうで、近藤さんの見る夢のリアリティにも驚きます。

この作品は一個単位でご購入いただけます。つまり近藤さんの悪夢のカケラを持ち帰ることができるのです。お気は確かか?と問いたくもなりますが、共有できないハズである「夢」というものを、アートピースで共有するというのがなんともおもしろいです。ご購入の際には会期中でも即日お持ち帰りいただけますので無くならないはずのメレンゲが減っていきます。あなたのお家にもぜひ近藤さんの悪夢のカケラをおひとつどうぞ。

『食べても食べても無くならない』以外の作品にはすべて、タイトルが英語でレーザー彫刻されたクリアアクリルが付属します。白い壁に掛けられていると彫刻された文字が同化して見えず、壁に落ちる文字の影で読むことができます。夢を見て目覚めた時、どんなに強烈な夢であってもふと気を抜くともう輪郭しか思い出せず、その輪郭もどんどん消えていって思い出せなくなることがよくあって、このアクリルはそれのようだと思いました。近藤さんは壁に落ちる影をすくい上げるのがきっと上手なのでしょう。クリアアクリル単体でも受注販売しています。気に入った言葉があればぜひ。

近藤南「Bright and dark」は今週末5月30日(日)まで。最後の土日は近藤さんが14時頃より在廊予定です。ウェブショップにて作品の販売もしていますが、ぜひこの空間を実際にその目で見て体感していただきたいです。

 

近藤 南「Bright and dark」
2021年5月14日[金]- 5月30日[日]/ 月曜・火曜定休
※作家在廊日:15・16・22・29・30日 各日の14時以降
※作品はWEBサイトでも販売しております

 

 

スタッフ:イイヅカ

 

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