Column

2023/04/22
millitsuka
「card」レポート

本展はmillitsukaさんが大好きなぬいぐるみである、ty社が90年代に販売していた「Beanie Babies」のシリーズのカードをインターネットで見つけ、millitsukaさんも自分の考えた生き物のカードを作りたいと思ったことがスタート地点となっています。最終目標は「Beanie Babies」のようなカードを作ることですが、その為のぬいぐるみがないのでmillitsukaさん自身で架空の生き物を描き、それをカードにすることとなりました。
 
というわけでメインで展示販売しているのは原画作品ですが目的はグッズのカードセットであるという、本来ならメインでないものが主役のような状態となっているのが不思議で、そこにmillitsukaさんらしさがあるなと感じます。

ty社の「Beanie Babies」は日本でも90年代に流行っていたので見たことある、あるいは持っていた、持っているという方も多いのではないでしょうか。かくいう私もmillitsukaさんの持ってきてくれた「Beanie Babies」カードアルバム(ebayで個人から購入したものでダブりや抜けがたくさんある)を見ていたら、大量にあるカードの中に見覚えのある顔を見つけ記憶を呼び覚まされ、家を探して20年ぶりくらいに小さな赤い犬と再会を果たしたのでした。とてもかわいいです。思い出せてよかった。

ところでmillitsukaさんの個展を当店で行うのは今回で2回目です。1回目は2019年の4月で、ちょうど4年前。当時の作品の画像が少しだけその時のコラムにありますが結構違うのでぜひご覧ください。この個展がmillitsukaさんが原画をアナログで描いたはじめての個展でした。

現在の作品はすべてエアブラシを吹き付けて描かれています。millitsukaさんのツイッターで爆速制作風景という動画があがっているのでちょっと見てみてください。あまりにも爆速なのですがそれでもとんでもない工程の多さが見てとれます。この制作方法で驚くのが、全体像がずっと見えず、先に塗った色も塗り重ねていく度にどんどん見えなくなっていき、全体を見ながら調整や変更ができず感覚で仕上げていくしかないところです。あと最後のポスカで枠線を引いている場面、もしもここでガクッ!とかなったら…と思うとゾッとします。

色味も前回と今回では明らかに異なりますね。最近のmillitsukaさんの作品はとても明るくてご機嫌でリラックスしている印象を受けます。4年前と今とでは生活環境もガラリと変化しているようですが、millituskaさんにとって明るさのある変化だったのだろうと感じます。以前のダークなトーンのテイストももちろん好きですが。

millitsukaさんの描いた不思議な生き物たちは本来の目的であるカードにもなりました。裏面には各作品のタイトルが記載されているのですが、言葉選びが面白く、描かれた生き物の性格や特徴のようなものが見えきて、タイトルも作品の一部だなと感じます。「Beanie Babies」のカードにも裏面に名前、誕生日、ポエムのような紹介文が記載されていて、そういう情報があるとさらにそのぬいぐるみに愛着が湧いてくるのです。

millitsukaさんがty社の90年代「Beanie Babies」を好きな理由が、ぬいぐるみにするために動物を簡略化してちょっと変な風になっているのに、それがなんの動物かだいたいの人がわかるところ。大量生産品だからこそ同じぬいぐるみでも個体差がありそこもかわいく見えてくるところ。同じ動物のぬいぐるみのサイズ違いが存在しているところ。ものすごい種類があるところ。アメリカで爆発的な人気があったからこそカードやアパレルなど多様な展開があったところ。くたくたでかわいいところ。顔がかわいいところ。とにかくかわいいところ。などなど上げきれないほどあります。

本展のために描かれたmillitsukaさんの15体のかわいいかわいい生き物たちも、ぜひいつかフカフカのぬいぐるみになってほしいものです。平面が立体になったとき、見えていなかった部分も見て触れるようになると思うとワクワクします。

millitsuka「card」は4月23日(日)19時までの開催です。ウェブショップでの販売もスタートしており、販売期間は4月25日23:59まで。一部グッズは会場のみの販売になっていますが、会場でも完売の場合は後日millitsukaさんのサイトにて販売をされるとのことです。最終日はmillitsukaさんが在廊を予定していますのでぜひ足をお運びください!

millitsuka「card」
 
好みのぬいぐるみを探し手に入れることが趣味です。ある時ebayでty社が90年代に販売していたぬいぐるみ「Beanie Babies」のコレクターズカードがあることを知り、たくさんのカードが詰まったアルバムを買いました。
 
プラスチック製の粒が入った彼らは、体が柔らかく、本来の動物とはかけ離れたフォルムで写真におさめられています。いいカードだなと思いました。しかしなぜよいと思ったかの理由をここで話すと、このDMが文字だらけになってしまいます。結論からいうと、私も、私が考えた動物をカードにしてみたかっただけです。
 
 
期間
2023年4月15日[土]- 4月23日[日]/ 月曜・火曜定休

 

 

スタッフ:イイヅカ

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