Column

2022/07/18
大久保つぐみ
「永遠遠泳」レポート

本展で展示されている作品は、大久保さんが以前何度か訪れている沖縄の風景です。海に囲まれていない土地ではなかなか見られない色彩の植物や強い日差し、色鮮やかな海や自然。どの作品も春や秋の風景だそうですが、コピックマーカーを使用して描かれた色鮮やかな風景は夏の輝きを感じさせます。

以前のメルマガで、個展のタイトル「永遠遠泳」の「永遠」という言葉について書きました。「永遠」という言葉はとても曖昧でファンタジックなものです、と。
 
永遠とはある状態が時間的に際限なく持続するさまで、どんなに長く続いていても終わってしまったら永遠とは言えなくなるし、永遠を確認できる術を誰も持ち得ないので、「永遠」という言葉はあるのにその状態が存在しないという不思議な言葉。比喩や祈り、願いとして使われる言葉です。

個展のタイトル「永遠遠泳」は人生というものを表しています。遠泳は泳ぎ出したら手足を動かすしかありません。漂っていたら流されてしまうから、ゆっくりとでもいいから進み続ける。泳いでいるうちに、力の抜き方や自分に合った息継ぎの仕方を習得していく。永遠かのように感じる時間でも、いつかどこかにたどり着く。

非日常を強く感じさせてくれる旅というものは、人生の息継ぎのようなものかもしれません。生活している中では気付かない、息を止めてしまっているような状態や余計な力みをほぐしてくれるような。
 
大久保さんの作品は、つい忘れがちになってしまう息継ぎを思い出させてくれます。今回のメインビジュアルを初めて見た時、スカッとした気持ちよさを感じました。

大久保さんが訪れた沖縄の島のひとつに、丸くて白い石を絶対に持って帰って来てはいけないと言われた場所があるそうです。その石ひとつひとつに、彼の人が無事に戻るように、などのささやかで大切な祈りや願いが込められているそう。
 
永遠みたいに感じる時間があっても、必ず最後はどこかに辿り着くから、自分に合った泳ぎ方と息継ぎで、進み続けることができますように。

 
 
大久保つぐみ
「永遠遠泳」
 
ながいながい旅に出る
ずっと怖かったのに泳ぎ出すと案外すんなり進んでいる。
息継ぎも覚えたし、力を抜く方法もわかってきた。
今日も広い海を行く。
明確な目的地はないけれど、最後だけはみんな同じ島に着くらしい。
  
  
期間
2022年7月9日[土]- 7月24日[日]/ 月曜・火曜定休

ウェブショップにて作品とグッズの販売がスタートしています。大久保さんのこれまでで一番大きな作品「私には楽園」をポスターに、一番小さな作品のシリーズをステッカーにしました。どちらもとても素敵にできましたが、特にポスターをお薦めしたいです。南国らしい鮮やかなオレンジの花と大きな植物、濃い青の空はまさに楽園のよう。見るたびに息継ぎを思い出させてくれそうです。
 
店頭での販売開始は来週末頃を予定しています。会期ギリギリになってしまい申し訳ありませんが、お時間の合う方はぜひお越しください。
 
 
 
スタッフ:イイヅカ

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