前回はらわた ちゅん子さんの個展「ゆのまちネオン」を当店で開催したのは2021年でした。この2年の間に「ネオン浴」という言葉が生まれ、ネオンを特集するテレビ番組が放送されたり、ネオンイラストをメインビジュアルにした施設などができたりと、ネオンの人気が定着したなと感じます。
前回のコラムで「今ではネオンサインはすっかりノスタルジックでかわいいものに見えています。」と書きましたが、2年後の今ではノスタルジックさよりもポップさを感じるようになりました。
今回の「よいまちネオン」では会場入口を暗幕で覆い、会場のライトはすべてブラックライトにし、ブラックライトに反応して光るアクリル板を使用した作品が展示されています。バリバリにポップだし妖しげな空間です。
酔い街、佳い街、好い街、宵待、よいまち…お酒を呑んだり注いだり、浴びたり溺れたり呑まれたりしている、艶かしく麗しい女たちと、たくさんのお酒にまつわる言葉やモチーフがアクリル板に刻まれています。これだけぎゅぎゅっと描き込まれているのにまとまっているのがさすがのデザイン力です。
アクリル板は一枚のもの、二枚重ねのもの、三枚重ねのものがあります。複数枚のものはそれぞれにイラストのパーツが刻まれていて、手前と奥で見え方が異なり立体感が出ます。正面からは見えない部分もちょっと角度を変えると見えたりして、レンチキュラーカードのような面白さがあったりします。
ブラックライトと通常のライトでは見え方がガラリと変わる作品なので、夜だけブラックライトで照らして昼と夜の違いを楽しむのもおすすめ。夜も営業するカフェやBAR、居酒屋などに飾ってもらえたら最高だなと思います。ブラックライトはamazonなどでも手軽に手に入るので、作品用にひとつかふたつご用意いただければ完璧です。
前回同様、本物のネオンももちろんあります。モチーフは「もっきり」。升の中にグラスを置き、こぼれるくらい日本酒を注ぐスタイルのことを「もっきり」というのだそうです。居酒屋で目の前でグラスから下の器にこぼれるほど注ぎ、さらに表面張力で盛り上がるほどギリギリまで注がれると思わず歓声をあげてしまいます。
ネオンサインはネオン管を使用したものですが、ネオン管とはどういうものか簡単に言うと、ガラス管にガスを封入し発光させているものです。最近では長寿命で低コストなLEDネオンも増えてきていますが、ネオン管は光り方が優しく、周囲も明るくしてくれるのでやっぱりネオン管の方が温かみがあり好きですね。ガラス管は直角までしか曲げられず、鋭角に曲げることができないので、正面から見た時に鋭角に曲がっているように見せるために後ろにガラス管をグニャグニャと逃がしている部分が多く、横からそこを見るのも楽しいです。
今回もかわいい展覧会オリジナルグッズがありますよ!「もっきりネオン」の思い出を持って帰ることのできるアクリルキーホルダーやステッカー、「よいまちネオン」メインビジュアルが大きくプリントされたTシャツに、ご利益のありそうなおめでたい熊手ネオンビッグステッカー、穴守稲荷神社に祀られている〝ネオン鳥居〟にインスパイヤされた〝稲荷飾燈(INARI NEON)〟シリーズのトートバッグと手ぬぐいもあります。グッズ、作品共にウェブショップにて販売がスタートしていますのでぜひご覧ください。
会期はいよいよ9月3日(日)まで。只今ネオンの本場、香港にネオン浴に行っているちゅん子さんですが、押し寄せる3つの台風の影響により9月2日(土)の在廊はなくなってしまいました。最終日3日(日)の在廊も飛行機のフライト事情によってはなくなってしまうかもしれませんが、展示は通常通り19時までご覧いただけますので是非お越しください。
はらわた ちゅん子
「よいまちネオン」
今夜は何処で酔おうかと、赤提灯の浮かぶ路地裏を歩く宵の口。
日本の「よいまち」に浮かぶネオンサインをテーマに制作した作品たちを展示します。
ひと夜の夢のような空間にぜひお越しください。
期間
2023年8月19日[土]- 9月3日[日]/ 月曜・火曜定休