藤田道子さんといえば、絹糸を使用した繊細で緻密なインスタレーションで、柔らかな光に満ちた空間をつくるイメージがあります。
今回の展示も、ピンクとイエローがふわっと柔らかく光を反射し、展示会場全体に光が溢れていて、柔らかいものに包まれているような心地のよい空間となっています。
空間から受ける印象に大きな違いは感じませんが、作品は新たな展開を迎えています。
緻密な作業を必要とし、どこか無機的な要素を感じさせる今までのインスタレーション作品とは異なり、紙と色鉛筆をメインとし、普段の生活の中でよく登場する動作、クリームを肌に塗り込む、本のページをめくる、紙を折る、ごみを丸める、などを作品に取り込んでいます。
「40代が近づくにつれやっと現実世界に対する愛情に目覚め、
より生に近いものが欲しくなったのです。」
と藤田さんは言います。
また、身近で開かれた創造として、折り紙という共有可能な創造物も作品となっています。
他人と同じものを作る体験は、特に子ども時代においては特別な喜びだったという藤田さん。
ピンクは肉体、イエローは光。
絹糸を使用した作品では、人の手の跡を極力消すようなものだったのに対し、今展示の作品では、人の動作や、皆で共有していくことの喜び、生きることに目を向けたものとなっています。
まったく新しい試みへのチャレンジをはじめた藤田さんの第一歩を、ぜひ実際に見にいらしてください。このやさしい光は、写真では残念ながら伝えることができません。
藤田さんは最終日の2月2日(日)に在廊を予定しています。ご本人のお話と合わせてご覧いただけるのおすすめです。
2020年1月18日[土]– 2月2日[日]/ 月曜・火曜定休
スタッフ:イイヅカ