いつもはPCを使ってデジタルで描く制作方法で絵を描いているmillitsukaさんですが、今展示では、彼女自身初めてのトライとなるアナログで、全ての作品が描かれています。
モニターを通して作品の画像を見るとフラットに見えるかもしれませんが、肉眼で見ると、塗り重ねられた絵の具の厚みや、絵の具に混ぜられたつぶつぶのテクスチャーが見てとれて、平面の絵の中に立体が潜んでいるのだということがわかります。
描く手法はいつもと全く異なりますが、描く作品のテイストはいつものmillitsukaさんのまま。つまり、パソコンで行なっていた着彩やグラデーションを、今回はそのまま自分の手によって行なっているということ。
言葉にするととてもシンプルですが、やってみるといくつもの工程が必要となり、失敗したら「取り消し」もできないし、新鮮な緊張感を伴う作業だったそう。
色を塗るにもマスキングテープを貼って、塗って、剥がして、また貼って、塗って、剥がして(どこを塗るか分からなくなったり)。色も限られた絵の具を混ぜ合わせて作り(足りなくなったり)、塗り重ねるには絵の具を乾かす時間が必要となり、グラデーションを表現するためのエアブラシは色を変えるごとに中身を洗う(音がうるさいらしい)。
millitsukaさん曰く、アナログでの作業は視覚、聴覚、嗅覚、触覚が刺激される、映画でいったら4D上映みたいな情報量だったということです。
もうひとつ、デジタルとアナログでの大きな違いがあります。デジタルではモニターの中で作品を描きますが、そのままでは「存在」していない。それをなにかの物質にプリントしてはじめて、触れることのできる作品となります。しかし、なにかしらにプリントすると、モニターで見ていたものとは質感も色も変化します。つまり、モニター上での「完成」は不完全であるということ。
アナログの場合は、描いているものがそのまま作品となり、唯一無二の存在となります。millitsukaさんは今回、この複製不可能の物体が家にあるというのが恐ろしくて、作品のそばを通るときなど緊張していたそうです。
タイトルの「安心のプレイス」について聞いてみたところ、millitsukaさんにとって、「行きたいけれど絶対に行けない場所」があることが「安心」なのだそう。
もし「行きたい場所」に本当に行けてしまっても大丈夫なように、行きたいけれど絶対に行けない、「安心のプレイス」を、millitsukasさんは描き続けるのです。
4月20日[土] – 5月6日[月・祝]/ 月・火定休
※4月29日・5月6日は祝日営業いたします
スタッフ:イイヅカ