月面のような、顕微鏡を覗き込んだ風景のような、見る角度によって見え方がちがう不思議な絵。
動物なのか虫なのか、よくわからないけど微笑んでこちらを見てくる小さくてかわいいサイズの陶器のオブジェ。
大きな世界と小さな世界が混ぜこぜになったような、そんなHiraparrさんの作品世界。
Hiraparrさんの作品は過去にも何回かみたことがあるのですが、どこかトロピカルだったり、多国籍な雰囲気があって、楽しくてゆったりしている。そんな印象がありました。
先日用事があって福生の方に行ったのですが、横田基地の近くの福生ベースサイドストリートあたりは、雰囲気というのか空気感というのか、本当に海外のような感じがしてすごく不思議だったのを覚えてます。
そんな中でHiraparrさんの今回の展覧会ステートメントに「横田基地の隣町(東京都昭島市)で育ち無意識のうちに多大な影響を受けているであろう自身のルーツ」と書いてあって、読んだときになるほどなあ、と妙に納得してしまいました。
よく見てみると「あれ、これあのファストフード店のドリンクの蓋だ」というような発見もあるレリーフ作品、「powder」のシリーズは、目視することのできない細菌やウイルスなどのミクロな存在を描いてるそう。
確かにウイルスのようにも見えるのですが、石や岩みたいなゴツゴツした感じが月面写真のようにも見えるんですよね。
そういえば電子顕微鏡で見た細胞などの画像も、月面とか火星とか、宇宙で観測された風景も、どちらも目で見ることができない世界だなと思うと、日々の生活では知覚できないミクロとマクロの世界が交錯している感じがして面白いです。
タイトルに使われている「Good Neighbor」とは、直訳すると「良き隣人」という意味で、妖精など目に見えない霊的な存在のことを表すこともあるそうです。
江戸時代に絵本の中で描かれた創作上の妖怪に、豆腐小僧という特に悪さをするでもなく、豆腐を持ったままたたずむ子どもの妖怪がたしかいるのですが、それをなんとなく思い出しました。少し話が逸れますが、ちょっとだけ調べてみたら悪さをしない妖怪って他にも色々いるみたいですね。たとえば沖縄のキジムナーとかもそういうかわいい系の妖怪だそう。
別にいいことも悪いこともしない。でも、にこにこしてそばにいる。そんな妖精のような、霊的存在の雰囲気を纏った小さな陶器のオブジェたち。
7インチレコードのアタッチメントにもなっているので、レコードプレーヤーに装着するとくるくると回ります。その姿もなんとも言えずかわいいんですよね。会場にはレコードプレーヤーがあるので実際に回っているところを見ることができます。
他の方の展覧会レビュー(online art jouralさん)でも書いてあったのですが、パンデミックによるここ数年の世界の変化や、国際情勢の不安定さから、どうしても捉えなおさなければならなくなってしまった「人との関係性」みたいなものを考えさせてくれます。それも、ちょっと楽しい感じで。
会期は6月26日(日)まで。ぜひ小さくて不思議な子たちに会いにきてください。
期間
2022年6月11日[土]- 6月26日[日]/ 月曜・火曜定休
ウェブショップでの販売がスタートしました。
スタッフ:ナカノ