ひらひら舞うちょうちょうが紡ぐ一日と一生の物語「ちょうちょうなんなん」。作家の井上奈奈さんの、2018年に出版された絵本です。
今回、陶芸家のこいけちえさん、製本家の本間あずささん、写真家の前川貴行さんの協力により、特装版『a Butterfly Effect』として新たに制作されました。
空想製本屋として一冊一冊手製本をしている本間あずささん。
特装版では製本と函作りをされています。蛇腹におられ、蝶の軌跡は刺繍で表現されています。
ベロア素材に箔を押された表紙が、まるで蝶の羽を表しているよう。
ベロアの素材に箔を押すことは今回初の試みだったようで、かなり試行錯誤されたとのことでした…。
写真で見ていたのとはやはり質感が違い、実物はずっしりと存在感があります。
長野県伊那市を拠点に活動されている陶芸家のこいけちえさんは本作りにはじめて関わったそうで、本函を制作されています。
二層になっている函は、一段目にちいさな植木鉢がたくさんあり、その中にはドライフラワーが散りばめられています。物語のテーマ、一瞬と永遠を表しているそう。
野生動物の写真を撮っている前川貴行さんが撮影したのは、物語のキーワードとなる蜘蛛。
和紙にプリントされていて、一瞬絵のようにも見えます。
木漏れ日の中を揺らめく黒い蜘蛛は、普段の前川さんの写真とはまた違った印象を受けます。
3月30日に行われた、井上さん、本間さん、こいけさんのギャラリートークで印象に残ったのが、本間さんとこいけさんのおふたりが、偶然自分たちの作品のポイントに黄色を選んだというところ。
井上さんにより引き寄せられた別々のジャンルの作家たちが「ちょうちょうなんなん」という絵本をとおすことにより、不思議な親和性をもった展示です。
会期は4月14日(日)まで。桜舞い散る国立へどうぞお越しください。
----------
井上奈奈 / こいけちえ / 本間あずさ / 前川貴行
3月30日[土] – 4月14日[日]
スタッフ:中野